最近ニュースなどでも物価上昇とよく聞くようになりました。今回は物価上昇(インフレ)が与える影響について調べてみました。
日本のインフレ特性と株式市場への影響
日本では現在インフレが緩やかに進んでいますが、アメリカやヨーロッパと比較しても緩やかです。これは日本のデフレ体質と賃金上昇が進んでいないことが背景にあります。
また、物価上昇により、消費者の家計への負担が増え、消費支出の抑制が起こります。
株式市場ではインフレが進むと企業収益が拡大し、株価が上昇する可能性があります。特に海外に製品を輸出している製造業は円安の恩恵を受ける可能性があります。一方で、小売業や外食産業は物価高によりマイナスになると考えられます。
日本のデフレ体質について
日本が長期間にわたってデフレ体質であった理由は、複数の経済的、社会的、構造的な要因が絡み合っています。
1. 人口減少と高齢化
まずは人口減少と高齢化です。日本は少子高齢化が進んでおり、労働人口が減少しています。これにより、需要が全体的に弱まり、物価が上昇しにくくなっています。
2. 企業の価格転嫁の弱さ
日本では長年、企業間で激しい価格競争が行われてきました。消費者に「安さ」が求められる文化が根付き、企業がコスト上昇を価格に転嫁することを躊躇する傾向があります。また、多くの企業が価格を上げるよりも、生産性向上やコスト削減で収益を確保しています。これがデフレを助長しています。
3. 賃金の伸び悩み
日本では労働市場の硬直性や非正規雇用の増加により、賃金が十分に上昇しませんでした。賃金の伸びが弱いため、消費者の購買力が高まらず、物価上昇を抑制する要因となりました。多くの企業が利益を内部留保(貯蓄)として蓄積し、賃金や投資に回さなかったこともデフレを助長しています。
主に以上のような理由により、日本はデフレ体質でした。特に人口減少の影響が大きく、デフレを脱却するのは簡単ではありません。
海外と比較した日本のインフレの性質
日本のインフレは物価上昇に賃金上昇が追い付いていない(日刊工業新聞)ため、需要が上昇しない特徴があります。これは海外には見られない特徴です。
アメリカのインフレ
アメリカでは2021年以降、コロナ禍の経済対策での大規模な財政支出や、需要急増がインフレを加速させました。対策としてFRB(米連邦準備制度)は急激な利上げを行い、インフレを抑えることを最優先としました。日本と異なる点は、アメリカでは企業が価格転嫁を迅速に行い、インフレを消費者が受け入れています。
ヨーロッパのインフレ
ヨーロッパではロシア・ウクライナ戦争により、エネルギー価格が急騰し、エネルギーコストがインフレの主因となりました。また、EU域内での物流問題や食料価格の上昇も物価高騰を助長しました。対策として、欧州中央銀行(ECB)は金利を引き上げましたが、景気後退のリスクも懸念されています。ヨーロッパは、インフレが主にエネルギーや食品価格の上昇による点が日本と似ています。しかし、賃金上昇がある程度あるため、インフレ圧力が維持されています。
アジア(中国、インドなど)のインフレ
中国やインドでは食品や燃料価格が主要なインフレ要因ですが、成長率の高さが物価上昇を支えています。それらの中央銀行はインフレ抑制のため、政策金利を引き上げつつあります。日本と異なる点はアジア諸国では、人口増加や所得の上昇が需要拡大を促し、インフレを支えていることです。
このように日本と海外とのインフレを比較すると、日本のインフレは主に輸入コストの上昇や円安による供給側の一時的な要因に依存しており、アメリカやアジア諸国のような需要拡大型のインフレではありません。
今後の日本のインフレ状況予想
これから日本が需要拡大型のインフレになるためには、物価上昇よりも多くの賃金上昇が必要です。
- 持続的な物価上昇と賃金上昇のバランス:
- 企業が価格転嫁を進めつつ賃金を上げられるかが鍵。賃金が伴わないインフレでは消費低迷が懸念されます。
- 株式市場では、価格転嫁能力の高い食品・小売企業や輸出型製造業が引き続き注目されます。
- 低金利政策の持続性:
- 日本銀行が金融緩和を維持する限り、金利敏感なセクター(不動産や建設業)にはプラスの影響が続きます。
インフレ環境下で成長が期待される日本企業の銘柄
以下の企業は、消費者の節約志向や生活防衛意識の高まりに対応したビジネスモデルを展開しており、インフレ環境下でも成長が見込まれます。
大光(3160)
業務用食品スーパー「アミカ」を運営し、一般消費者向けにも販売を拡大しています。ネット販売や新店舗展開を積極的に進めており、業績の向上が期待されています。
マーケットエンタープライズ(3135)
リユース品の買取・販売を手掛ける企業で、消費者の節約志向の高まりにより需要が増加しています。オンラインを中心とした事業展開で、効率的な運営を実現しています。
セリア(2782)
100円均一ショップを全国展開しており、低価格で高品質な商品を提供しています。消費者の生活防衛意識が高まる中、安価な商品の需要が増加し、業績の拡大が期待されています
まとめ
日本の株式市場におけるインフレの影響は、他国と比較するとまだ緩やかである一方、政府の政策対応や為替動向が今後の動向に大きく影響します。輸出型企業や価格転嫁力の強い小売り企業の成長が続くと予想されますが、消費減退リスクが依然として懸念材料です。